親が暮らしていた実家を、いつか自分が引き継ぐ。
いざその時が来ると「何から手をつければいいの?」と戸惑う方がほとんどではないでしょうか。実家の相続は期限のある手続きが多く、税金の特例も複雑です。
本記事では、実家の相続で押さえたい期限と税金、そして「住む・貸す・売る」の判断軸を、できるだけやさしい言葉で整理しました。
実家を相続したら最初に押さえたい3つの期限

実家の相続でいちばん怖いのは、知らないうちに期限を過ぎてしまうことです。
相続放棄とは、預金も借金もまとめて一切引き継がない手続きです。実家だけを選んで放棄することはできないので、ここは誤解しやすいポイントです。
相続登記の義務化と過去の相続の期限
相続登記、つまり実家の名義を親から相続人へ変える手続きは、2024年4月1日から義務になりました。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の対象になります。
義務化より前に起きた相続も対象で、多くの場合は2027年3月31日が期限です。
話し合いがまとまらないときは、「自分が相続人です」と法務局へ申し出る相続人申告登記で、ひとまず義務を果たせます。名義変更ではないため、後で改めて登記が必要です。
実家の相続税はいくら?基礎控除と小規模宅地等の特例

「実家を相続すると高い税金がかかる」と心配される方は多いのですが、実はそうとは限りません。
600万円×相続人数
国税庁の令和6年分の統計では、亡くなった方は約160万人で、そのうち相続税がかかったのは10.4%でした。基礎控除は相続人が子ども2人なら4,200万円で、ここまでは相続税がかかりません。
判定は預金や保険、金なども合計して行います。変額保険の仕組みや金の分割保有の記事も参考になります。
さらに実家の土地には、小規模宅地等の特例が使える場合があります。亡くなった方が住んでいた土地の評価額を、330㎡まで80%減らせる制度です。
特例は申告して初めて使えるため、結果的に税額がゼロでも申告が必要です。
配偶者や同居の子は使いやすい一方、別居の子は「持ち家に住んでいない」などの厳しい条件(家なき子特例)があります。税理士への確認が安心です。
住む・貸す・売るの比較と選び方

相続した実家の使い道は、大きく3つに分かれます。
| 選択肢 | 向いている人 | 主な負担 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 住む | 実家の近くで暮らす予定がある | リフォーム費用 | 耐震性や設備の老朽化を確認 |
| 貸す | 立地が良く借り手が見込める | 修繕費、管理委託料 | 空き家の3,000万円控除は使えなくなる |
| 売る | 住む予定も管理する余力もない | 解体費、仲介手数料、譲渡所得税 | 特例の期限から逆算して動く |
迷ったときは、「10年後もこの家を管理し続けられるか」を考えてみてください。
遠方で年に数回しか帰れないなら、早めの売却検討が負担を抑えやすいです。売却後の資金の置き場所に悩む方は、不動産クラウドファンディングの比較のように少額から不動産に関わる方法もあります。
📝 相続の体験談を読んでいて感じること
「実家の片付けだけで半年かかった」という声は、相続の体験談で本当によく目にします。売るか残すかを決める前に、片付けの段取りを家族で決めておくと、その後の判断がぐっと楽になると感じています。
売るなら押さえたい空き家の3,000万円特別控除

実家を売って利益が出ると、譲渡所得税という税金がかかります。税額の計算方法や、購入時の契約書が見つからないときの注意点は、不動産売却の税金はいくら?計算方法と手取りを守る特例を徹底解説で詳しく解説しています。
そこで知っておきたいのが、相続した空き家の3,000万円特別控除です。条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引けます。主な条件は次のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること
- 亡くなる直前まで親が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所などの例外あり)
- 相続から売却まで、住んだり貸したりしていないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること
制度そのものの期限は、2027年12月31日までの売却です。延長されるかは今後の税制改正しだいなので、使いたい方は早めの準備をおすすめします。
2024年からの改正で変わった2つのポイント
1つ目は、買主が売却の翌年2月15日までに取り壊しや耐震改修をしても、特例が使えるようになったことです。古い家が建ったままでも売りやすくなりました。
2つ目は、家と土地を相続した人が3人以上いると、控除額が1人2,000万円に減ることです。
兄弟姉妹が多い場合は、遺産分割の段階から意識しておきたいところです。
空き家のまま放置するリスク

「とりあえず放置」が、実はいちばん高くつくこともあります。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で、どちらも過去最多・最高でした。
全国の住宅のうち約7戸に1戸が空き家(令和5年住宅・土地統計調査)
2023年12月の法改正で「管理不全空家」という区分が加わりました。市区町村から勧告を受けると、土地の固定資産税を最大6分の1に抑える住宅用地特例が外れます。
土地の固定資産税が大きく上がるおそれがあるため、換気や草刈りなど最低限の管理は欠かせません。国の集計では、令和6年度に管理不全空家への勧告が378件出ており、制度はすでに動き出しています。
どうしても手放したいときの相続土地国庫帰属制度
買い手がつかない土地は、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう道もあります。ただし建物がある土地は対象外なので、解体が前提です。費用は審査手数料が1筆1万4,000円、承認後の負担金が原則20万円です。解体費まで考えると、まずは売却を試してから検討するのが現実的だと思います。
まとめ:実家の相続は「期限」と「10年後」から考える
実家の相続では、3か月・10か月・3年という期限をまず押さえることが出発点です。
そのうえで相続税の有無を確認し、「住む・貸す・売る」を10年後の暮らしから選びましょう。売るなら、空き家の3,000万円控除の期限が大きな判断材料になります。
家族との話し合いと専門家への相談を早めに始めることが、後悔しない相続への近道です。
よくある質問(FAQ)
相続放棄は3か月以内に家庭裁判所で手続きしますが、預金なども含めすべて手放すことになります。ほかの財産を受け取りたいなら、相続したうえで売却や国庫帰属制度を検討します。
できます。ただし戸籍集めなどの手間があり、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)もかかります。相続人が多い場合や古い相続は、司法書士に頼むと安心です。
共有にすると、売却には全員の同意が必要です。次の相続で関係者も増えるため、1人が相続して他の兄弟にお金を払う方法や、売って現金で分ける方法も比べてみましょう。
相続税と所得税という別の税金の特例なので、条件を満たせば両方使えます。ただし小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限まで土地を持ち続けることが条件になる場合があり、売る時期には注意が必要です。
税金は税理士、名義変更は司法書士、売却や賃貸は不動産会社、揉めているときは弁護士が主な相談先です。市区町村の空き家相談窓口を使うのも一つの方法です。