不動産売却の税金はいくら?計算方法と手取りを守る特例を徹底解説

家を売ったら、税金はいくらかかるのでしょうか。

不動産の売却では数千万円単位のお金が動くため、「売れた金額の何割かを税金で持っていかれるのでは」と不安になる方が少なくありません。ただ実際には、税金がかかるのは売却で出た「利益」の部分だけです。条件によっては、税金がまったくかからないケースもあります。

個人的に不動産売却の相談記事や国税庁の資料を読み込んで感じるのは、税額を左右するのは売却価格よりも「所有期間」「購入時の書類」「特例を使えるかどうか」の3点だということです。本記事では、税金の種類から計算方法、使える特例、確定申告の流れまでを、専門知識がない方にもわかるように整理しました。

不動産売却でかかる税金は4種類、中心は譲渡所得税

不動産売却でかかる税金は4種類、中心は譲渡所得税

不動産を売ったときにかかる主な税金は、次の4つです。

税金 払うタイミング 金額の目安
印紙税 売買契約のとき 1,000万円超5,000万円以下の契約で1万円(軽減後)
登録免許税 引き渡しのとき 抵当権抹消は不動産1個につき1,000円
所得税・復興特別所得税 翌年の確定申告時 利益(譲渡所得)×15.315%または30.63%
住民税 翌年6月ごろから 利益(譲渡所得)×5%または9%

印紙税は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作る不動産売買契約書なら軽減税率が使えます。契約金額が500万円超1,000万円以下なら5,000円、5,000万円超1億円以下なら3万円です。

登録免許税は、住宅ローンが残っている家を売るときの抵当権抹消登記などで発生します。所有権移転の登記費用は、一般的には買主が負担します。

この2つは数千円から数万円で済むことがほとんどです。本当に注意すべきなのは、利益に対してかかる所得税と住民税(まとめて「譲渡所得税」と呼ばれます)。ここからは、この譲渡所得税に絞って見ていきましょう。

譲渡所得の計算方法と取得費・譲渡費用のルール

譲渡所得の計算方法と取得費・譲渡費用のルール

国税庁のタックスアンサー(No.1440)では、譲渡所得の金額を次の式で計算するとしています。

売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

「取得費」は、ひとことで言えばその不動産を手に入れるためにかかったお金です。「譲渡費用」は売るためにかかったお金を指します。

取得費は建物の減価償却を差し引いて計算する

取得費には、購入代金のほか、購入時の仲介手数料や登記費用、あとから行ったリフォームなどの改良費が含まれます。

ここで見落とされがちなのが、建物部分の「減価償却」です。減価償却とは、建物が年月とともに古くなって価値が下がった分を差し引く考え方のこと。土地は古くならないので、差し引くのは建物だけです。自宅など事業に使っていない建物の場合、国税庁は「建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算するとしています。償却率は、木造なら0.031、鉄筋コンクリート造なら0.015です。

取得費がわからないときの「5%ルール」に要注意

相続した実家などで、購入時の契約書が見つからないことはよくあります。

この場合は、売却価格の5%を取得費とする「概算取得費」を使えます。ただ、5,000万円で売った家なら取得費はわずか250万円。実際の購入価格よりはるかに小さい金額になりやすく、税額が大きく膨らむ原因になります。

売却を考え始めたら、まず購入時の売買契約書や領収書、通帳の記録を探すことをおすすめします。

譲渡費用に含まれるもの・含まれないもの

譲渡費用に含まれる代表例は、仲介手数料、売主が負担した印紙税、測量費、売るために建物を取り壊した費用などです。一方で、固定資産税や日常の修繕費といった維持・管理の費用は含まれません。住宅ローンの繰上返済手数料なども、一般的には譲渡費用にならないとされています。

📝 個人的に一番伝えたい「書類」の話

譲渡所得税の資料を読み比べて何度も感じるのは、節税テクニックよりも「購入時の契約書を持っているか」の方が、税額への影響がずっと大きいという事実です。とくに親から引き継いだ家は、書類がどこにあるか家族の誰も知らないことが珍しくありません。売却の話が具体的になる前に、実家の書類を一緒に確認しておくだけでも大きな備えになると考えています。

所有期間で税率は約2倍変わる

所有期間で税率は約2倍変わる

譲渡所得税の税率は、所有期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。

長期譲渡所得(5年超)
20.315%
所得税15%+復興税0.315%+住民税5%
短期譲渡所得(5年以下)
39.63%
所得税30%+復興税0.63%+住民税9%
マイホーム10年超の軽減税率
14.21%
課税所得6,000万円以下の部分

利益が1,000万円なら、長期で約203万円、短期だと約396万円。同じ物件でも、税金の差は190万円以上になります。

所有期間は「売った年の1月1日」で判定する

国税庁は、長期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える」土地建物の譲渡による所得と定めています。つまり、実際に持っていた期間が5年を過ぎていても、売った年の1月1日時点で5年以下なら短期扱いです。

例えば2020年に買った物件なら、2026年1月1日以降に売れば長期になります。売却時期を数か月ずらすだけで税率が半分になるケースもあるため、購入日は必ず確認しておきましょう。

令和9年分からは内訳が変わる予定

令和8年度税制改正で「防衛特別所得税」(所得税額の1%)が創設され、令和9年1月1日以後の所得に適用されます。同時に復興特別所得税は2.1%から1.1%に引き下げられるため、上乗せ分の合計は2.1%のままです。上記の20.315%・39.63%という合計税率は変わりませんが、確定申告書の記載項目が増える点は覚えておくと安心です。

計算例で見る税額シミュレーション

計算例で見る税額シミュレーション

具体的な数字で確認してみましょう。

20年前に4,000万円(土地2,000万円・木造建物2,000万円)で買ったマイホームを、5,000万円で売ったケースです。譲渡費用は仲介手数料など200万円とします。建物の減価償却費は「2,000万円×0.9×0.031×20年」で1,116万円なので、取得費は2,884万円。譲渡所得は1,916万円になります。

同じ売却でも、条件次第で税額はここまで変わる

取得費がわからず5%ルールを使った場合:約924万円
契約書があり、特例を使わない場合:約389万円
3,000万円特別控除を使った場合:0円

※長期譲渡所得(20.315%)で試算。5%ルールの場合の譲渡所得は4,550万円です。

正直なところ、この差には改めて驚かされます。書類の有無と特例の使い方だけで、手取りが900万円以上変わる計算です。

税金を大きく減らせる主な特例

税金を大きく減らせる主な特例

譲渡所得税を軽くする特例はいくつかありますが、個人の売却でよく使われるのは次のものです。なお、特別控除額の上限は、年間の譲渡所得全体で5,000万円とされています。

特例 主な対象 効果
居住用財産の3,000万円特別控除 自宅(所有期間は不問) 譲渡所得から最高3,000万円控除
10年超所有の軽減税率 所有10年超の自宅 6,000万円以下の部分が14.21%
相続空き家の3,000万円特別控除 相続した親の家(令和9年12月31日までの売却) 最高3,000万円控除(相続人3人以上は2,000万円)
譲渡損失の損益通算・繰越控除 損をして自宅を売った場合(令和9年12月31日まで) 給与所得などと相殺でき、翌年以後3年間繰越可能

マイホームの3,000万円特別控除

自分が住んでいる家、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売った家が対象です。所有期間の長さは問われません。

ただし、親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却は対象外で、前年・前々年にこの特例を使っていないことも条件です。また、10年超所有の軽減税率とは重ねて使えるため、控除しきれなかった利益にも低い税率が適用されます。

相続した空き家の3,000万円特別控除

親が一人で住んでいた家を相続して売る場合に使える特例です。国税庁によると、主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家で、マンションなど区分所有建物ではない
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が1億円以下で、相続後に貸したり住んだりしていない
  • 耐震リフォームか取り壊しを行う(売った後、翌年2月15日までに行われる場合も可)

相続人が3人以上で共有した場合は、1人あたりの控除額が2,000万円に下がる点にご注意ください。また、この特例を使うと、相続税の一部を取得費に足せる「取得費加算の特例」とは併用できません。どちらが有利かは、税理士に試算してもらうのが確実です。

売却で損が出たときの特例

住宅ローンが残る自宅を買値より安く売った場合など、一定の要件を満たせば、損失を給与所得などと相殺(損益通算)できます。令和8年度税制改正で、これらの特例の適用期限は令和9年12月31日まで2年延長されました。

確定申告の流れと見落としやすい影響

確定申告の流れと見落としやすい影響

不動産を売ったら、原則として翌年に確定申告が必要です。

売買契約
契約書に収入印紙を貼って印紙税を納める
決済・引き渡し
抵当権抹消などの登録免許税を支払う
翌年2月16日〜3月15日
確定申告をして所得税・復興特別所得税を納める
翌年6月ごろ
市区町村から住民税の通知が届く

特例を使って税金が0円になる場合でも、確定申告をしなければ特例は適用されません。申告書には「譲渡所得の内訳書」を添付し、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば自宅からでも作成できます。

もうひとつ見落とされやすいのが、翌年の社会保険料への影響です。特別控除を差し引いた後の譲渡所得は、国民健康保険料などの計算に含まれる場合があります。会社を辞めて国民健康保険に加入している方は、FIRE後の社会保険料の考え方もあわせて確認しておくと安心です。

💭 売却の相談を受けたときにお伝えしている視点

「いくらで売れるか」は多くの方が気にされますが、個人的には「手元にいくら残るか」を先に計算していただくようお勧めしています。税金や仲介手数料を引いた手取りを把握してから、住み替え資金や長期のインデックス投資などの使い道を考えた方が、売却後に慌てずに済むケースが多いと感じています。

売却資金を再び不動産で運用したい方は、少額から始められる不動産クラウドファンディングという選択肢もあります。また、金などほかの資産を売る場合は税金の仕組みが異なるため、金の売却と節税の考え方も参考になるはずです。

まとめ:売る前に「税金込みの手取り」を把握しておく

不動産売却の税金は、売却価格ではなく利益に対してかかります。

税額を大きく左右するのは、売った年の1月1日時点での所有期間、購入時の書類の有無、そしてマイホームや相続空き家の特例を使えるかどうかです。相続空き家特例や損益通算の特例には期限があるため、該当しそうな方は早めにスケジュールを立てておきましょう。

制度は毎年の税制改正で見直されることがあります。実際に売却する際は、国税庁の最新情報を確認するとともに、判断に迷う部分は税理士や税務署に相談しながら進めていくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

不動産を売って損をした場合も、確定申告は必要ですか?

利益が出ていなければ譲渡所得税はかからないため、原則として申告は不要です。ただし、自宅の売却損を給与所得などと相殺する特例を使いたい場合は、確定申告をしなければ適用されません。損失が出たときこそ、特例の対象にならないか確認することをおすすめします。

相続した家の所有期間はいつから数えますか?

相続や贈与で取得した不動産は、亡くなった親などが取得した日を引き継いで所有期間を計算します。そのため、相続した直後に売っても、親が長く持っていた家なら長期譲渡所得になるのが一般的です。取得費も親が買ったときの金額を引き継ぎます。

3,000万円特別控除は夫婦の共有名義だとどうなりますか?

マイホームの3,000万円特別控除は、所有者ごとに適用されます。夫婦それぞれが住んでいる家を共有していれば、要件を満たす限り各自で最高3,000万円を控除できるため、合計で最高6,000万円まで控除できる計算です。

投資用マンションを売ったときも特例は使えますか?

3,000万円特別控除や10年超の軽減税率は、自分が住む家を対象とした特例のため、賃貸に出している投資用物件には使えません。投資用物件では、所有期間を5年超にしてから売ることや、取得費・譲渡費用を漏れなく計上することが主な対策になります。

確定申告を忘れたらどうなりますか?

期限後に申告すると、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税がかかる可能性があります。特例の適用にも影響するおそれがあるため、気づいた時点でできるだけ早く税務署に相談するのがよいでしょう。売却額が大きい場合や相続が絡む場合は、税理士への依頼も検討してみてください。

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