ネット証券の口座開設を検討する際、多くの方がSBI証券と楽天証券のどちらを選ぶかで悩まれます。実は、どちらか一方を選ぶのではなく、両方の口座を目的別に使い分けるという選択肢が、近年では最も合理的な資産運用スタイルとして注目されています。
口座開設そのものは無料ですし、維持費もかかりません。両社はそれぞれ異なる強みを持っているため、上手に役割分担させることで、ポイント獲得・IPO当選・銘柄選択の幅など、すべての面で恩恵を受けられるのです。
本記事では、両社を併用する際の具体的な使い分けパターンと、知っておくべき注意点を実体験も交えながら解説します。
SBI証券と楽天証券の使い分けが注目される理由

両社はネット証券の「2大巨頭」と呼ばれる存在です。SBI証券はグループ全体で1,500万口座、楽天証券も単独で1,300万口座を突破しており、いずれも圧倒的な利用者数を誇ります。
基本的なサービス内容、たとえば国内株の売買手数料が実質無料である点や、新NISA・iDeCoに対応している点は、ほとんど横並びです。
ただし、細かく見ていくと両社の戦略の方向性は明確に分かれています。
SBI証券は三井住友カードとの連携による高還元率クレカ積立、豊富なIPO取扱実績、4市場すべての国内株式に対応する取扱銘柄の多さなどで「投資の本格派」向けの設計。楽天証券は楽天経済圏との連携、直感的に使えるアプリ、楽天ポイントの柔軟な活用など「生活と投資の一体化」で強みを発揮しています。
つまり、それぞれの得意分野をつまみ食いできるのが併用戦略の最大のメリット。です。
NISA口座はどちらに置くべきか

併用戦略を考えるうえで最初に決めるべきなのがNISA口座の開設先です。
なぜなら、NISA口座は全金融機関を通じて1人1口座しか開設できない。からです。この制約が、使い分け戦略の前提となります。
NISA口座の金融機関変更は年単位で可能ですが、手続きは変更したい年の前年10月1日から当年9月30日までに完了させる必要があります。さらに、その年にNISA口座で一度でも買付があると、その年分の変更はできません。計画的に決める必要があります。
楽天経済圏のユーザーなら楽天証券
楽天市場や楽天モバイル、楽天カードを日常的に利用している方は、NISA口座も楽天証券に置くのが自然です。楽天カードで積立を設定すれば、代行手数料0.4%未満の低コストファンドでも0.5%の楽天ポイント還元を受けられます。
さらに、貯まった楽天ポイントで投資信託や国内株、米国株を購入できるのも楽天証券の強みです。ポイントと現金の区別なく、同じ口座内で資産形成に回せます。
高額クレカ利用者や投信保有ポイント重視ならSBI証券
年間のクレジットカード利用額が大きい方、特に300万円以上使う方はSBI証券がおすすめです。三井住友カード プラチナプリファードを利用した場合、年間500万円以上の利用で3.0%、300万円以上で2.0%のポイント還元を受けられます。
また、投信保有ポイントの設計もSBI証券が優位です。楽天証券が楽天投信投資顧問の運用する6銘柄のみを対象としているのに対し、SBI証券は原則として全銘柄がポイント付与の対象となっています。
クレカ積立は「役割分担」で効率最大化

2024年3月の内閣府令改正により、クレカ積立の上限が月5万円から月10万円へ引き上げられました。新NISAのつみたて投資枠(年間120万円)を、すべてクレカ決済で埋められるようになった意味は大きいです。
ただし、クレカ積立は1つの証券会社につき月10万円までしか設定できません。
ここで併用戦略が活きてきます。たとえばSBI証券で月10万円、楽天証券で月10万円、合計月20万円のクレカ積立をすれば、それぞれのポイント経済圏で還元を受けられる計算になります。
ただし注意点として、SBI証券のプラチナプリファード3.0%還元には「年間カード利用額500万円以上」という条件があります。条件を満たせない場合の還元率は1.0〜2.0%に下がります。
一方、楽天証券は年間カード利用額に関係なく固定の還元率が適用される。ため、カード利用が少ない方には楽天証券のほうが有利な設計です。
IPO投資では両方の口座を活用するのが王道

IPO(新規公開株式)投資において、SBI証券と楽天証券の併用は定番の戦略です。
2025年の実績を見ると、SBI証券のIPO取扱実績は62社、楽天証券は43社でした。同じIPO銘柄でも、両方の口座から申込むことで単純に当選確率が2倍近くになります。
さらに、両社の抽選方式が異なる点も併用する意味を高めています。
SBI証券は配分の60%が抽選、残りが取引実績による配分となっており、IPOチャレンジポイントという独自制度で落選するたびにポイントが貯まり、次回以降の当選確率を上げられます。
対する楽天証券は「完全平等抽選」を採用しており、申込株数や取引実績に関係なく誰でも同じ確率で抽選されます。資金力が乏しい方でも平等にチャンスがあるのが魅力です。
つまり、SBI証券で長期的にチャレンジポイントを貯めつつ、楽天証券で平等抽選に挑む「二刀流」が理想的です。
ポイント経済圏で選ぶ使い分けパターン

日本の二大ポイント経済圏である楽天経済圏とVポイント経済圏(旧Tポイント統合後)、どちらを軸に生活しているかで使い分けの方針が変わります。
楽天経済圏ユーザーの最適解
楽天カードや楽天市場、楽天モバイル、楽天ひかりなどを利用している方は、メイン口座を楽天証券にするのが自然です。楽天証券でのクレカ積立はSPU(スーパーポイントアッププログラム)の対象となり、楽天市場での買い物時のポイント還元率も上乗せされます。
サブとしてSBI証券の口座を持ち、IPO申込や札証・福証の単独上場銘柄の取引、特定の投資信託の保有ポイント獲得などに使うと効率的です。
Vポイント経済圏ユーザーの最適解
三井住友カードをメインカードとしている方、SBI新生銀行や住信SBIネット銀行を使っている方はSBI証券をメインに据えるのが合理的です。
Vポイントは投資信託や国内株の購入にも使えますし、SBI証券の投信マイレージは原則全銘柄が対象なので、長期保有するほど効果が出ます。
この場合のサブ口座は楽天証券。IPOの完全平等抽選に申込んだり、楽天ポイント消化用の口座として活用するのが定番パターンです。
銀行連携による資金運用の使い分け

両社の併用戦略で見逃せないのが、提携ネット銀行との連携による金利優遇です。
楽天銀行と楽天証券を連携させる「マネーブリッジ」は、普通預金の優遇金利が1,000万円以下の部分で年0.38%という大手銀行の100倍以上の水準。となっています。2026年2月に金利が引き上げられたばかりで、投資しない待機資金の置き場所として非常に有利です。
一方、住信SBIネット銀行の「SBIハイブリッド預金」はSBI証券と連携することで年0.31%の金利が適用され、残高は自動的にSBI証券の買付余力に反映されます。入出金操作なしで投資に回せる仕組みが便利です。
併用する場合、待機資金は金利の高い楽天銀行に、投資用の資金はSBIハイブリッド預金に置くといった分け方ができます。
取扱銘柄の違いを活かした使い分け

両社は取扱商品にも違いがあり、目的に応じて使い分ける価値があります。
外国株式の取扱国数
外国株はSBI証券が9ヵ国、楽天証券が6ヵ国に対応しています。米国・中国・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシアの6ヵ国は両社で取引できますが、ロシア株・韓国株・ベトナム株はSBI証券でのみ取引可能です。
新興国株に興味がある方はSBI証券の口座が必須となります。
国内株式の取扱市場
国内には東証・名証・札証・福証の4つの証券取引所があります。楽天証券は東証・名証のみ、SBI証券は全4市場に対応しています。
RIZAPグループやマルタイなど、札証・福証の単独上場銘柄を購入したい場合はSBI証券が必要です。
単元未満株(ミニ株)
1株から購入できる単元未満株の取扱銘柄数も両社で差があります。SBI証券は上場している約3,700銘柄以上に対応しているのに対し、楽天証券は寄付銘柄2,119本・リアルタイム銘柄1,000本です。
少額で幅広い銘柄に分散投資したい方はSBI証券、特に株主優待狙いの投資を検討している方は銘柄数が多いほうが有利です。
併用時の注意点と確定申告

両口座を使い分ける際には、いくつか気をつけたい点があります。
まず、複数口座で特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも、一方の口座で損失が出て、もう一方の口座で利益が出たときの損益通算には確定申告が必要になります。
通常、特定口座(源泉徴収あり)単体なら申告は不要ですが、証券会社をまたいだ損益通算は自動では行われないのです。
タイプ別おすすめの使い分けパターン

最後に、投資家のタイプ別に具体的な使い分けパターンをまとめます。
楽天経済圏ヘビーユーザー
- メイン口座:楽天証券(NISA、iDeCo、メイン積立)
- サブ口座:SBI証券(IPO申込、特定銘柄の取引用)
- 待機資金:楽天銀行(マネーブリッジで年0.38%)
高額クレカ利用者(年間300万円以上)
- メイン口座:SBI証券(NISAと三井住友プラチナプリファードで月10万円積立)
- サブ口座:楽天証券(楽天カードで追加のクレカ積立、IPO申込)
- 待機資金:住信SBIネット銀行+楽天銀行を併用
IPO投資重視タイプ
合わせて松井証券やマネックス証券なども併用すると効果的
両口座ともアクティブに活用し、すべてのIPOに両方から申込
SBI証券でチャレンジポイントを長期的に蓄積
楽天証券は完全平等抽選で少額から挑戦
長期的な資産形成の観点では、S&P500への積立投資や複利効果を最大化する戦略と組み合わせることで、使い分けの効果がさらに高まります。
よくある質問(FAQ)
どちらもオンラインで口座開設できます。マイナンバーカードがあれば本人確認もスマホ完結で、それぞれ10〜15分程度の入力で申込が完了します。口座開設の審査には1〜2週間かかる場合がありますが、並行して申し込めば同時期に両口座を利用開始できます。
NISA口座の金融機関変更は、変更したい年の前年10月1日から当年9月30日までに手続きする必要があります。ただし、その年にすでにNISA口座で買付がある場合は変更できず、翌年分からの変更となります。積立設定がある場合は、手続き前に解除しておくことが重要です。
その通りです。SBI証券で月10万円、楽天証券で月10万円、合計月20万円のクレカ積立が可能です。ただし、NISAのつみたて投資枠は年間120万円が上限なので、20万円×12ヶ月=240万円の積立のうち、120万円分は特定口座での投資になります。成長投資枠(年間240万円)と合わせれば、NISA枠内で吸収することも可能です。
ポイント還元の最大化という観点では意味があります。SBI証券と楽天証券はそれぞれ異なるポイント(Vポイント/楽天ポイント)を付与するため、両方の経済圏でポイントを貯められます。また、証券会社のシステム障害リスクを分散する効果もあります。ただし管理は煩雑になるため、投資初心者の方はまず1社に絞ることをおすすめします。
特定口座(源泉徴収あり)を選んでいれば、通常は確定申告不要です。ただし、SBI証券で損失、楽天証券で利益という状況で損益通算したい場合や、譲渡損失の3年間繰越控除を使いたい場合は確定申告が必要です。また、NISA口座での取引は非課税なので、いくら利益が出ても確定申告の対象にはなりません。
まとめ:自分に合った使い分けで資産形成を加速する
SBI証券と楽天証券の使い分けは、投資の世界で広く実践されている王道戦略です。どちらか一方を選ぶのではなく、両方の強みを取り入れることで、ポイント還元・IPO当選確率・取扱銘柄の幅など、あらゆる面で恩恵を受けられます。
最も重要なのはNISA口座をどちらに置くかという判断です。楽天経済圏ユーザーは楽天証券、高額クレカ利用者やVポイント経済圏ユーザーはSBI証券を選ぶのが基本形となります。
口座開設そのものは無料で、維持費も一切かかりません。まずは両方の口座を開設し、自分の投資スタイルと生活パターンに合わせて役割を決めていくのが、遠回りに見えて実は最短ルートです。
長期の資産形成は、商品選択や積立設定だけでなく、使うツールの最適化によっても差がつきます。オンライン取引のセキュリティにも気を配りながら、賢い使い分けで着実な資産形成を目指しましょう。