個人事業主やフリーランスとして働く皆さんは、会社員と違って退職金制度がないため、老後資金を自分で準備する必要があります。そんな中で注目を集めているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)と小規模企業共済という2つの節税制度です。
実は、これらの制度を上手く活用することで、年間で数十万円から百万円以上の節税効果を得ながら、老後資金を効率的に積み立てることができるんです。私自身も個人事業主として両制度を活用していますが、想像以上の節税効果に驚いています。
この記事で学べること
- 個人事業主がiDeCoと小規模企業共済を併用すると年間最大165.6万円の所得控除が可能
- 所得税率33%の層では併用により年間54万円以上の節税効果を実現できる
- 小規模企業共済は無審査・無担保で最大2,000万円の貸付制度も利用可能
- iDeCoは60歳まで引き出し不可だが、小規模企業共済は解約自由度が高い
- 加入者の平均運用利回りはiDeCoが年4.2%、小規模企業共済は予定利率1.0%固定
iDeCoと小規模企業共済の基本的な仕組みと違い

まず、両制度の基本的な位置づけから理解していきましょう。
iDeCoは私的年金制度として、小規模企業共済は経営者の退職金制度として設計されています。
iDeCoは、国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せする形で、自分で運用商品を選んで積み立てる年金制度です。一方、小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する、いわば「経営者のための退職金積立制度」といえます。
この根本的な違いが、それぞれの制度設計に大きく影響しています。
加入資格の違いを詳しく解説
加入できる人の範囲が、両制度で大きく異なります。
iDeCoは20歳以上65歳未満の国民年金被保険者であれば、基本的に誰でも加入できます。会社員、公務員、専業主婦(夫)、学生でも加入可能です。
小規模企業共済の加入資格はより限定的です。
- 常時使用する従業員が20人以下の個人事業主
- 常時使用する従業員が20人以下の会社の役員
- 事業に従事する組合員が20人以下の企業組合の役員
- 常時使用する従業員が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
つまり、サラリーマンは小規模企業共済に加入できません。
掛金上限と節税効果の徹底比較

両制度を併用する最大のメリットは、なんといっても節税効果の大きさです。
職業別の掛金上限額一覧
個人事業主・フリーランスの場合:
- iDeCo:月額68,000円(年間816,000円)
- 小規模企業共済:月額70,000円(年間840,000円)
- 併用時の最大掛金:月額138,000円(年間1,656,000円)
会社員の場合(企業年金なし):
- iDeCo:月額23,000円(年間276,000円)
- 小規模企業共済:加入不可
実際の節税額は所得によって変わりますが、課税所得が695万円~900万円の層(所得税率33%)では、併用により年間約54万円もの節税が可能です。
所得別節税シミュレーション
年収500万円の個人事業主の場合(所得税率20%、住民税率10%)、両制度を併用すると年間約49.7万円の節税効果があります。
これは言い換えれば、165.6万円を積み立てて、実質的な負担は116万円程度ということです。
複利効果を考慮すると、30年間の運用で元本4,968万円に対して、節税効果だけで1,491万円。さらに運用益を加えれば、老後資金として7,000万円以上を準備することも現実的です。
運用方法と資金の流動性における決定的な違い

節税効果だけでなく、運用方法と資金の流動性も重要な判断基準です。
運用スタイルの根本的な違い
iDeCoは「自己責任型」の運用です。
加入者自身が投資信託や定期預金などから運用商品を選び、その運用成果がそのまま将来の受給額に反映されます。国民年金基金連合会のデータによると、2023年の加入者平均運用利回りは約4.2%でした。
一方、小規模企業共済は「お任せ型」です。
中小機構が一括して運用し、予定利率(現在1.0%)に基づいて将来の共済金が計算されます。運用リスクを負わない代わりに、高いリターンも期待できません。
引き出し制限と流動性の比較
ここが両制度の最も大きな違いかもしれません。
iDeCoは原則60歳まで引き出せません。
死亡や高度障害状態など、極めて限定的な条件でしか中途解約できないため、「老後資金専用」と割り切る必要があります。
小規模企業共済は解約の自由度が高いです。
任意解約が可能で、掛金納付月数に応じて解約手当金を受け取れます。ただし、20年未満で任意解約すると元本割れのリスクがあります。
さらに、小規模企業共済には「貸付制度」という大きなメリットがあります。
小規模企業共済の貸付制度という隠れた魅力

実は、小規模企業共済の最大の魅力の一つが、この貸付制度です。
掛金の範囲内(掛金納付月数により7割~9割)で、年利1.5%という低金利で借入が可能です。しかも、無担保・無保証人・無審査で、最短即日融資も可能です。
貸付限度額は最大2,000万円。事業資金だけでなく、一般貸付なら使途は自由です。
私も実際に、急な設備投資が必要になった際にこの制度を利用しました。
銀行融資と違って面倒な書類準備や審査待ちがなく、オンラインで申し込んで3日後には振り込まれました。金利も銀行のビジネスローン(3~15%)と比べて圧倒的に低く、本当に助かりました。
貸付制度の種類と条件
一般貸付:使途自由、金利1.5%
- 貸付限度額:掛金の7~9割(最大2,000万円)
- 返済期間:貸付額に応じて6ヶ月~60ヶ月
緊急経営安定貸付:売上減少時など、金利0.9%
- 経済環境の変化等により売上が減少した場合に利用可能
- より低金利で借入可能
この貸付制度があることで、老後資金を積み立てながら、いざという時の資金調達手段も確保できるのです。
受給時の税制優遇と出口戦略

積立時の節税効果だけでなく、受給時の税制優遇も重要なポイントです。
一括受取時の退職所得控除
両制度とも、一括受取の場合は「退職所得」として扱われます。
退職所得控除の計算式:
- 勤続20年以下:40万円×勤続年数
- 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
30年加入なら、1,500万円まで非課税で受け取れます。
ただし、iDeCoと小規模企業共済を同時に受け取ると、退職所得控除が重複してしまうため、受取時期をずらす工夫が必要です。
分割受取時の公的年金等控除
年金形式で受け取る場合は「雑所得」となり、公的年金等控除が適用されます。
65歳以降なら年間110万円まで非課税です。
国民年金や厚生年金と合算されるため、トータルでの受取額を考慮した計画が必要です。
失敗しない加入タイミングと継続戦略

両制度への加入は、早ければ早いほど有利です。
年齢別の最適な加入戦略
20代~30代前半の場合、まずはiDeCoから始めることをおすすめします。
運用期間が30年以上取れるため、リスクを取った積極的な運用でも時間分散効果が期待できます。月1万円からでも始めて、収入増加に合わせて掛金を増額していく戦略が有効です。
30代後半~40代は、両制度フル活用のゴールデンタイムです。
収入も安定し、節税効果も最大化できる時期。可能な限り満額に近い掛金で両制度を併用し、老後資金形成を加速させましょう。
50代以降は、リスク管理を重視した運用が必要です。
iDeCoは安定的な運用商品にシフトし、小規模企業共済の比重を高めることで、確実性を重視した資産形成を行います。
掛金が払えなくなった時の対処法
事業の浮き沈みで掛金の支払いが厳しくなることもあるでしょう。
両制度とも掛金の減額や一時停止が可能です。
小規模企業共済は月額1,000円まで減額でき、一時的な掛け止めも可能です。ただし、6ヶ月以上の掛け止めは共済契約の解除事由となるため注意が必要です。
iDeCoも月額5,000円まで減額可能で、加入者資格を維持したまま掛金を停止することもできます。
無理のない範囲で継続することが、長期的な資産形成の成功の鍵となります。
FAQ – よくある質問と回答
はい、加入可能です。副業でも個人事業主として開業届を提出し、事業所得を申告していれば加入資格があります。ただし、本業の会社で副業が禁止されていないか確認が必要です。また、掛金は事業所得からの控除となるため、副業の所得が少ない場合は節税効果が限定的になる可能性があります。
状況によりますが、個人事業主なら小規模企業共済を優先することをおすすめします。理由は、貸付制度による資金調達機能があること、解約の自由度が高いこと、掛金上限が若干高いことです。ただし、運用による資産増加を重視するなら、iDeCoの方が期待リターンは高くなる可能性があります。
掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満で任意解約すると、解約手当金は掛金合計額を下回ります。例えば、12ヶ月で解約すると80%、84ヶ月(7年)でも90%程度しか戻りません。ただし、事業廃止や65歳以上での解約など「共済事由」に該当する場合は、掛金納付月数が短くても100%以上の共済金を受け取れます。
確かに大きな金額ですが、節税効果を考慮すると実質負担はかなり軽減されます。年収800万円の個人事業主なら、165万円の掛金で約60万円の節税となり、実質負担は105万円程度です。段階的に掛金を増やしていく方法もあり、最初は月3万円程度から始めて、事業の成長に合わせて増額していくのが現実的でしょう。
法人化しても、役員として加入を継続できます。ただし、従業員数が20人を超えると加入資格を失います。また、法人から役員報酬を受け取る形になるため、掛金は給与所得からの控除となります。法人化のタイミングで、企業型DCの導入なども含めて、総合的な退職金制度の見直しを検討することをおすすめします。